巡回指導の通知を受けて、ドタバタしていませんか?
適正化実施機関による巡回指導は、新規許可を得て運輸開始をした後に初回巡回指導があり、その後は評価によって定期的に実施されます。これは、トラック運送業(一般貨物自動車運送事業)を営んでいれば、決して避けては通れない道なのです。
まずは、巡回指導の内容を良く理解する事が重要です。ここでは、巡回指導で確認される38項目について詳しく解説していきます。
1.事業計画
①主たる事務所及び営業所の名称及び位置に変更はないか
事務所及び営業所の名称や位置の変更には、届出や認可申請が必要です。必要な手続きをせずに勝手に変更していませんか?
☑名称の変更は、事業計画変更届出が必要です。
☑主たる事務所の位置変更は、事業計画変更届出が必要です。
☑営業所の位置の変更は、事業計画変更認可申請が必要です。(条件によっては届出になる場合もあります。)
②営業所に配置する事業用自動車の種別及び数に変更はないか
管轄支局で登録されている種別、台数と実際に営業所にある種別、台数に違いはありませんか?
☑直近で管轄運輸支局へ届出している事業計画変更届出(増減車等)を確認してみましょう。
③車庫の位置及び収容能力に変更はないか
車庫の位置や収容能力の変更には、認可申請が必要です。必要な手続きをせずに勝手に変更していませんか?
☑車庫の位置及び収容能力の変更は、事業計画変更認可申請が必要です。
④乗務員の休憩、仮眠又は睡眠施設の位置及び収容能力は適正か
休憩、仮眠又は睡眠施設の位置や収容能力の変更には、認可申請が必要です。必要な手続きをせずに勝手に変更していませんか?
☑休憩、仮眠又は睡眠施設の位置や収容能力の変更は、事業計画変更認可申請が必要です。
⑤乗務員の休憩、仮眠又は睡眠施設の保守及び管理は適正か
実際に休憩、仮眠又は睡眠施設として清潔かつ安全に常時使用できるように管理されているか。物置等になっており、実際に使用できないような状態になっていませんか?
☑仮眠又は睡眠施設として清潔かつ安全に常時使用できる状態にしましょう。
⑥届出事項に変更はないか(役員・社員、特定事業者に係る運送の需要者の名称変更等)
役員の変更(役員の増減や交代等)は、届出が必要です。変更後に届出をせず、そのままではないですか?
☑役員の変更は、施行規則に基づく届出が必要です。
⑦自家用貨物自動車の違法な営業類似行為(白トラ利用等)はないか
白トラの傭車及び自ら白トラを保有し、営業行為をしていませんか?
☑白トラの傭車及び自ら白トラを保有し、営業行為をしてはいけません。
⑧名義貸し、事業の貸渡し等はないか
外注(個人事業主)との請負契約等をしていませんか?
☑外注(個人事業主)との請負契約等は、名義貸しを疑われる可能性があります。
2.帳票類の整備、報告等
⑨事故記録が適正に記録され、保存されているか
「車両等の交通による事故」かつ道路交通法に規定する「道路」における事故が発生した際に、事故記録を作成し保存していますか?
☑事故記録の保存期間は、3年間です。
☑必須記載事項はこちらをClick
⑩自動車事故報告書が適正に届出されているか
自動車事故報告規則に基づき、該当する重大事故の報告をしていますか?
☑該当する重大事故が発生した日より、30日以内に管轄支局へ提出が必要です。
☑速報に該当する場合は、事故・事件発生から24時間以内に速報が必要です。
⑪運転者台帳が適正に作成されて、保存されているか
運転者全員分の運転者台帳を作成していますか?また必須記載事項10項目で記載不備はありませんか?
☑退職等をした乗務員の乗務員台帳の保存期間は、3年間です。
☑必須記載事項はこちらをClick
⑫車両台帳及び車検証(写)が適正に保管されているか
全車両の台帳又は最新の車検証・保険証書の写しを備えていますか?
☑車両毎の最新の車検証の写、保険証書の写(任意保険・自賠責保険)等を備え置きましょう。
⑬事業報告書、事業実績報告書を提出しているか
事業報告書及び事業実績報告書を定められた期限までに、管轄運輸支局へ提出していますか?
☑事業報告書は、毎事業年度の経過後100日以内に提出が必要です。
☑事業実績報告書は、毎年4月1日から翌3月31日までの期間に係るものを7月10日までに提出が必要です。
3.運行管理等
⑭運行管理規定が定められているか
職務権限が明確化された運行管理規定が制定されていますか?
☑職務権限が明確化された運行管理規定を作成していないといけません。
⑮運行管理者が選任され、届出されているか
運行管理者の選任や解任があった際に、管轄運輸支局へ運行管理者選任又は解任届出をしていますか?
☑車両数に応じた管理者の数が必要です。
☑原則、運行管理者選任解任届出は、選任解任後1週間以内に届出が必要です。
⑯運行管理者に所定の講習を受けさせているか
国土交通大臣の認定を受けた講習を、所定の期間に受けていますか?
☑選任されている運行管理者は、2年に1回、国土交通大臣の認定を受けた講習を受ける必要があります。
☑始めて選任された運行管理者は、選任された年度内に国土交通大臣の認定を受けた講習を受ける必要があります。
☑特別講習の通知があった場合、対象者は、国土交通大臣の認定を受けた講習を受ける必要があります。
⑰事業計画に従い、必要な運転者を確保しているか
登録されている事業用自動車の数と運転者の数が同等かそれ以上であるか?
☑日雇いの人は、選任できません。
☑二ヵ月以内の期間契約社員は、選任できません。
☑試みの使用期間中の人(ただし、14日を超えた人は大丈夫です。)は、選任できません。
⑱過労防止を配慮した勤務時間・乗務時間を定め、これを元に運行計画が作成され、休憩時間、睡眠のための時間が適正に管理されているか
拘束時間、休息期間、運転時間等が改善基準告示に違反していませんか?
☑適正な乗務割表を作成する必要があります。
☑適性な労務管理を行う必要があります。
⑲過積載による運送を行っていないか
トラックの最大積載量を超えて荷物を積載するような運送の引受け、過積載を前提とする運行計画の作成、運転者へ過積載による運送の指示をしていませんか?
☑運行管理者は、適正な積載重量を指示及び管理する必要があります。
☑最大積載量を超えた運送はしてはいけません。
⑳点呼の実施及び記録、保存は適正か
乗務前点呼、乗務途中点呼、乗務後点呼時の必須確認事項に不備はありませんか?また点呼は、適正に実施していますか?
☑点呼は、原則「対面」です。
☑運行管理者は、全点呼回数の3分の1以上を実施する必要があります。
☑点呼記録簿の保存期間は、1年間です。
☑必須記載事項はこちらをClick
㉑乗務等の記録(運転日報)の作成及び保存は適切か
必須記載事項7項目で記載不備はありませんか?(8トン以上又は最大積載量5トン以上の車両は、10項目)
☑乗務開始地点・乗務終了地点は、通常は、「車庫」になります。自宅へ乗って帰ったら駄目ですよ。
☑乗務等の記録(運転日報)の保存期間は、1年間です。
☑必須記載事項はこちらをClick
㉒運行記録計による記録及びその保存並びに活用は適正か
車両総重量が7トン以上又は最大積載量が4トン以上の車両は、運行記録計(デジタルタコグラフ、アナログタコグラフ等)を搭載し、必要な内容を記録していますか?
☑運行記録計による記録の保存期間は、1年間です。
☑必須記載事項はこちらをClick
㉓運行指示書の作成、指示、携行、保存は適正か
乗務前点呼及び乗務後点呼が共に対面で行うことができない場合は、運行指示書が必要となります。指示書の未作成や必須記載事項7項目で記載不備はありませんか?
☑運行指示書の保存期間は、1年間です。
☑必須記載事項はこちらをClick
㉔乗務員に対する輸送の安全確保に必要な指導監督を行っているか
毎年、年間教育計画を策定し乗務員に必要な指導及び監督を実施していますか?
☑毎年、必要な指導及び監督(必須12項目)を実施する必要があります。
☑乗務員への教育記録の保存期間は、3年間です。
㉕特定の運転者に対して、特別な指導(特別教育)を行っているか
事故惹起運転者、初任運転者、高齢運転者に該当する者に、必要な特別指導を実施していますか?
☑雇用前の事故歴等を運転記録証明書等で把握する必要があります。
☑特定の運転者への特別教育記録の保存期間は、3年間です。
㉖特定の運転者に対して、適性診断を受けさせているか
必要な適性診断を受診させていますか?
☑事故惹起者は、特定診断Ⅰ又はⅡが必要です。
☑運転者として、新たに雇い入れた者は、初任診断が必要です。(一部除外あり。)
☑高齢運転者は、適齢診断が必要です。
4.車両管理等
㉗整備管理規定が定められているか
職務権限が明確化された整備管理規定が制定されていますか?
☑職務権限が明確化された整備管理規定を作成していないといけません。
☑最新の法令改正の内容が反映されているか確認しましょう。
㉘整備管理者が選任され、届出されているか
整備管理者の選任や解任があった際に、管轄運輸支局へ整備管理者選任又は解任届出をしていますか?
☑原則、整備管理者選任解任届出は、選任解任後15日以内に届出が必要です。
㉙整備管理者に所定の研修を受けさせているか
地方運輸局長が行う研修を、所定の期間に受けていますか?
☑選任されている整備管理者は、2年に1回、地方運輸局長が行う研修を受ける必要があります。
☑始めて選任された整備管理者は、選任された年度の翌年度末迄に地方運輸局長が行う研修を受ける必要があります。
㉚日常点検基準を作成し、これに基づき点検を適正に行っているか
日常点検基準を作成し、日常点検を適正に行っていますか?
☑1日1回、その運行の開始前において、目視等により日常点検を実施する必要があります。
㉛定期点検基準を作成し、これに基づき適正に点検及び整備を行い点検整備記録簿が保存されているか
定期点検基準を作成し、定期点検を適正に行っていますか?また、その記録(写)を営業所で保管していますか?
☑適正な3ヵ月点検及び12ヵ月点検を実施する必要があります。
☑点検整備記録簿の保存期間は、1年間です。
5.労基法等
㉜就業規則が制定され、届出されているか
就業規則を制定し、管轄労働局へ届出をしていますか?
☑従業員10人以上の事業所の場合は、就業規則の制定と管轄労働局への届出が必要です。
㉝36協定が締結され、届出されているか
36協定を締結し、管轄労働局へ届出をしていますか?
☑1日8時間、週40時間の法定労働時間を超えて残業を課す場合は、36協定の締結及び届出が必要です。
㉞労働時間、休日労働について違法性はないか(運転時間は除く)
36協定違反や連続出勤等違法性がなく、適正に就労させていますか?
☑36協定違反や連続出勤等がないように労務管理をする必要があります。
㉟所定の健康診断を実施し、その記録及び保存は適正か
全運転者に所定の健康診断を受診させていますか?
☑雇い入れ時や年に1回(夜間従事者は、6ヵ月以内毎に1回)健康診断の受診が必要です。
☑健康診断結果の保存期間は、5年間です。
6.法定福利費
㊱労災保険・雇用保険に加入しているか
加入対象者が、労災保険及び雇用保険に加入していますか?
☑労災保険は、原則、雇用形態、勤務形態にかかわらず、全ての労働者が加入対象となります。
☑雇用保険は、原則、1週間の所定労働時間が20時間以上かつ31日以上継続して雇用が見込まれる場合は加入対象となります。
㊲健康保険・厚生年金保険に加入しているか
加入対象者が、健康保険・厚生年金保険に加入していますか?
☑健康保険・厚生年金保険は、原則、1ヵ月の所定労働時間数及び1週所定労働時間が、常時雇用者の4分の3以上である場合は、対象となります。
7.運輸安全マネジメント
㊳運輸安全マネジメントの実施は適正か
運輸安全マネジメントを実施し、輸送の安全にかかわる適正な情報を公表していますか?
☑輸送の安全に関する基本的な方針
☑輸送の安全に関する目標及び当該目標の達成状況
☑輸送の安全に関する計画
☑自動車事故報告規則に関する事故の統計
保有車両数が200両以上の事業者にあっては、安全管理規定の設定及び届出、安全統括管理者の選任及び届出も必要になります。
トラック運送業の巡回指導とは?
巡回指導の通知が来たから取り組むのではなく、常日頃から当たり前に対応できる環境を作ることが一番大事です。
また、トラック運送業の決まり事を、間違った内容でとらえてしまったまま、事業を続けることは非常にリスクが高くなります。
この機会にトラック運送業(一般貨物自動車運送事業)の決まり事や巡回指導について、一度弊所へお気軽にご相談ください。