整備管理者については、運行管理者と同様にトラック運送業(一般貨物自動車運送事業)の巡回指導項目でも非常に重要な部分となります。
ここでは、整備管理者になる要件、研修の受講義務、補助者について解説します。
1.整備管理者とは
一定台数以上のバス、大型トラック又は事業用自動車を使用する自動車の使用者は、その使用の本拠ごとに、一定の要件を備える「整備管理者」を選任して必要な権限を付与し、自動車の点検・整備及び自動車車庫の管理に関する事項を処理させなければいけません。
2.整備管理者の資格要件
整備管理者として選任するには、2年の実務経験プラス地方運輸局長が行う研修の受講又は国家資格整備士の資格が必要になります。
整備の管理を行おうとする自動車と同種類の自動車の点検若しくは整備又は整備の管理に関する2年以上の実務経験を有し、かつ地方運輸局長が行う研修を修了した者
<実務経験と地方運輸局長の行う研修について>
「整備の管理を行おうとする自動車と同種類の自動車」とは | ①二輪自動車以外 ②二輪自動車 |
「点検又は整備に関する実務経験」とは | ①整備工場、特定給油所等における整備要員として点検・整備業務を行った経験(工員として実際に手を下して作業を行った経験の他に技術上の指導監督的な業務経験を含む。) ②自動車運送事業者の整備実施担当者として点検・整備業務を行った経験 |
「整備の管理に関する実務経験」とは | ①整備管理者の経験 ②整備管理者の補助者(代務者)として車両管理業務を行った経験 ③整備責任者として車両管理業務を行った経験 |
「地方運輸局長の行う研修を修了した者」とは | 運輸支局毎に実施している「整備管理者選任前研修」を受講・修了した方をいいます。 「整備管理者選任後研修」ではないので、注意しましょう。 |
国家資格整備士の資格を取得している者
一級、二級または三級の自動車整備士技能検定に合格した方は、一般貨物自動車運送事業整備管理者として選任できます。選任前研修の受講・修了の必要はありません。
3.整備管理者の必要人数
整備管理者は、運行管理者とは違い、トラックの台数により選任数が変わることはありません。
1営業所に1名いれば問題ありません。
4.整備管理者の研修受講について
①現在選任されている整備管理者
現在選任されている整備管理者は、地方運輸局長が行う研修(整備管理者選任後研修)を2年に1回受講しなければなりません。
まず、この2年はどのような基準で考えればいいかというと、最後に研修を受講した年度の翌々年度中に受ければいいということです。例えば2023年10月1日に選任後研修を受講したのであれば、次回は2025年4月から2026年3月末日までに受講すればいいことになります。
②新たに選任された整備管理者
新たに選任された整備管理者については、地方運輸局長が行う研修(整備管理者選任後研修)を選任された年度の翌年度末迄に受講しなければなりません。
選任された年度の翌年度末迄とは、例えば2023年10月1日に選任した場合、2024年4月から2025年3月末日までに受講すればいいことになります。
新たに選任された整備管理者については、少し複雑な箇所でもあるので、下記例を参考に解説していきます。
<パターン1> A会社の大阪営業所で選任されていた整備管理者が転勤して、東京営業所で新たに選任された場合(この整備管理者は、直近で2年に1回の選任後研修を受講しているものとする。) これは、新たに選任された整備管理者に該当しません、①の2年に1回の受講で考えます。 |
<パターン2> A会社で過去に選任されていた整備管理者が、再度同じ会社で選任された場合 これは、以前受講した選任後研修から2年に1回の期間が経過しているかしていないかで異なります。 【経過している】新たに選任された整備管理者と同じ扱い。②の内容で受講を考えます。 【経過していない】新たに選任された整備管理者に該当しません。①の2年に1回の受講で考えます。 |
<パターン3> A会社の整備管理者として選任されており、直近の選任後研修を受講した後、退職しB会社の整備管理者として選任された場合(別の会社へ転職した場合) これは、新たに選任された整備管理者に該当します。②の内容で受講を考えます。 A会社で受講したばかりであっても、B会社で選任された時は、選任された年度の翌年度末迄に受講が必要です。 |
5.整備管理補助者を選任するには
整備管理補助者を選任した場合、整備管理者が欠勤、一時的不在の時等に一定条件の下、整備管理者に代わって、一定の業務を行わせることができます。
運行可否の決定及び日常点検の実施の指導等(日常点検に係る業務に限ります。)
整備管理補助者を選任するために必要なこと
①補助者は、整備管理者の資格要件を満足する者又は整備管理者が研修等を実施して十分な教育を行った者から選任すること。
②補助者の氏名及び補助する業務の範囲が明確であること。
③整備管理者が、補助者に対して下表に基づいて研修等の教育を行うこと。
整備管理者は、選任された補助者に対して次の教育を実施しなければなりません。 教育を実施したら教育記録簿を作成し、使用した資料の写しとともに保存しておいてください。 |
整備管理補助者への研修 以下【】のタイミングごとに指導してください。 【補助者を選任するとき】 ・整備管理規定の内容 ・整備管理者選任前研修の内容 【整備管理者選任後研修を受講したとき】 ・整備管理者選任後研修の内容 【整備管理規定を改正したとき】 ・改正後の整備管理規定の内容 【行政から情報提供を受けた時、その他必要な時】 ・行政から提供された情報等必要に応じた内容 |
④整備管理者が、業務の執行に必要な情報を補助者にあらかじめ伝達しておくこと。
⑤整備管理者が、業務の執行結果について、補助者から報告を受け、また、必要に応じて結果を記録・保存すること。
補助者を選任した場合、補助者名簿に必要事項を記入して社内掲示し、従業員全員に周知徹底しなければなりません。