トラック運送業(一般貨物自動車運送事業者)は、交通事故を引き起こした事業用自動車の運転者についてその再発防止を図り、また、事業用自動車の運行の安全を確保するために必要な運転に関する技能及び知識を十分に習得していない新たに雇い入れた運転者及び加齢に伴い身体機能が変化しつつある高齢者である運転者について交通事故の未然防止を図るために、これら特定の運転者に対し、適性な指導を実施する必要があります。
1.新たに雇い入れた運転者の事故歴の把握について
まず、新たに運転者を雇い入れた時は、運転記録証明等により、雇い入れる前の事故歴(少なくとも過去3年間)を把握し、事故惹起運転者に該当するか否かを確認することが必要です。また、確認に使用した運転記録証明等については、必ず保存しておきましょう。
2.事故惹起運転者に対する特別な指導の内容及び時間
事故惹起運転者への指導については、下記①又は②が該当します。
①死者又は重傷者を生じた交通事故を引き起こした運転者
②軽傷者を生じた交通事故を引き起こし、かつ、当該事故前の3年間に交通事故を引き起こしたことがある運転者
<指導内容> |
①事業用自動車の運行の安全の確保に関する法令等 事業用自動車の運行の安全を確認するため貨物自動車運送事業法その他の法令等に基づき運転者が遵守すべき事項を再確認させる。 |
②交通事故の事例の分析に基づく再発防止対策 交通事故の事例の分析を行い、その要因となった運転行動上の問題点を把握させるとともに、事故の再発を防止するために必要な事項を理解させる。 |
③交通事故に関わる運転者の生理的及び心理的要因並びにこれらへの対処方法 交通事故を引き起こすおそれのある運転者の生理的及び心理的要因を理解させるとともに、これらの要因が事故につながらないようにするための対処方法を指導する。 |
④交通事故を防止するために留意すべき事項 貨物自動車運送事業者の事業の態様及び運転者の乗務の状況等に応じて事業用自動車の運行の安全を確保するために留意すべき事項を指導する。 |
⑤危険の予測及び回避 危険予知訓練の手法等を用いて、道路及び交通の状況に応じて交通事故につながるおそれのある危険を予測させ、それを回避するための運転方法等を運転者が自ら考えるよう指導する。 |
⑥安全運転の実技 実際に事業用自動車を運転させ、道路及び交通の状況に応じた安全な運転方法を添乗等により指導する。 |
<指導時間> |
上記①から⑤までについて合計6時間以上実施すること。 ⑥については、可能な限り実施することが望ましい。 |
3.初任運転者に対する特別な指導の内容及び時間
初任運転者への指導については、運転者として常時選任するために新たに雇い入れた者が該当します。
ただし、新たな会社に入社し、その会社で事業用自動車に乗務する前3年間に他の一般貨物自動車運送事業者等で運転者として常時選任されていた方は、初任運転者に該当しません。
<指導内容> |
1.乗務員の年間教育内「指導及び監督の内容」の12項目を実施する。 ①事業用自動車を運転する場合の心構え ②事業用自動車の運行の安全を確保するために遵守すべき基本的事項 ③事業用自動車の構造上の特性 ④貨物の正しい積載方法 ⑤過積載の危険性 ⑥危険物を運搬する場合に留意すべき事項 ⑦適切な運行の経路及び当該経路における道路及び交通の状況 ⑧危険の予測及び回避並びに緊急時における対応方法 ⑨運転者の運転適性に応じた安全運転 ⑩交通事故に関わる運転者の生理的及び心理的要因並びにこれらへの対処方法 ⑪健康管理の重要性 ⑫安全性の向上を図るための装置を備える事業用自動車の適切な運転方法 ②③④については、下記内容を実際の車両を用いて指導すること。 ②⇒日常点検に関する事項 ③⇒事業用自動車の車高、視野、死角、内輪差及び制動距離等に関する事項 ④⇒貨物の積載方法及び固縛方法 |
2.安全運転の実技 実際に事業用自動車を運転させ、道路及び交通の状況に応じた安全な運転方法を添乗等により指導する。 |
<指導時間> |
1.乗務員の年間教育内「指導及び監督の内容」の12項目(①~⑫)を15時間以上実施すること。 2.安全運転の実技を20時間以上実施すること。 |
1.乗務員の年間教育内「指導及び監督の内容」の12項目の詳細はこちら
4.高齢運転者に対する特別な指導の内容について
高齢運転者への指導については、下記①又は②が該当します。
①65才以上の者を新たに運転者として選任した場合
②65才になった者(65才になってからは、3年以内ごと)
適齢診断の受診後に、その結果を踏まえ、個々の運転者の加齢に伴う身体機能の変化の程度に応じた事業用自動車の安全な運転方法等について運転者が自ら考えるよう指導する。(特に決められた項目や時間はありません。)
5.特別な指導の実施時期について
①事故惹起運転者 当該交通事故を引き起こした後再度事業用自動車に乗務する前に実施する。ただし、やむを得ない事情がある場合には、再度乗務を開始した後1ヵ月以内に実施する。なお、外部の専門的機関における指導講習を受講する予定である場合は、この限りでない。 |
②初任運転者 当該貨物自動車運送事業者において初めて事業用自動車に乗務する前に実施する。ただし、やむを得ない事情がある場合には、乗務を開始した後1ヵ月以内に実施する。 |
③高齢運転者 適齢診断の結果が判明した後1ヵ月以内に実施する。 |
6.特別指導及び適性診断の対象となる運転者について
特別指導及び適性診断対象表実施のポイントとしては、新規採用運転者に対する適性診断と特別指導(初任教育)は、乗務を始めてからは時間が取れなくなり未実施となる事が多いことから、乗務に就かせる前に、適性診断、健康診断、事故歴の確認、初任教育をセットとして実施させることです。
☑特別指導の実施及び適性診断を受診した場合は、運転者台帳へ記録すること。
☑一般診断は、3年毎に1回の受診が望ましいです。