遅れていた業務前自動点呼の運用が開始されました。今後、色々な課題が出てくるとは思いますが、現状での業務前自動点呼を実施するために必要な要件や実施できるようになるまでの流れを解説していきます。
業務前自動点呼を実施するための3つの要件
業務前自動点呼を実施するには、「機器・システム」、「施設・環境」、「運用上の遵守事項」の3つの要件を満たす必要があります。
1.機器・システムの要件
この自動点呼機器については、国土交通省から認定を受けた機器を使用する必要があります。現段階では、2社のみとなっております。必ず国土交通省のホームページ上で認定を受けた機器を取り扱う事業者かを確認してから購入しましょう。
<機器・システムの要件について>
➀ | 項目⑳に掲げる業務前自動点呼に必要な事項の確認、判断及び記録を実施できる機能を有すること。 |
② | 運行管理者等が、運転者等ごとの業務前自動点呼の実施予定及び当該業務前自動点呼に責任を持つ運行管理者の氏名を入力でき、当該業務前自動点呼の実施状況及び実施結果を確認できる機能を有すること。 |
③ | 業務前自動点呼を受ける運転者等について、生体認証符号等を使用する方法により確実に識別する機能を有し、生体認証符号等による識別が行われた場合に、業務前自動点呼を開始する機能を有すること。 |
④ | 運転者によるアルコール検知器の使用前又は使用中に当該運転者について生体認証符号等を使用する方法により確実に識別する機能を有し、業務前自動点呼が開始された後に、生体認証符号等による識別が行われた場合に、アルコール検知器が作動する機能を有すること。ただし、前項目又は項目⑦の生体認証符号等による識別の直後にアルコール検知器を使用する場合には、本項目の生体認証符号等による識別は、省略することができる。 |
⑤ | 運転者が行うアルコール検知器による測定の結果検知された呼気中のアルコールの有無又はその濃度及びアルコール検知器使用時の静止画又は動画を自動的に記録及び保存する機能を有すること。 |
⑥ | 運転者が行うアルコール検知器による測定の結果、運転者の呼気中にアルコールが検知された場合には、直ちに運行管理者に対し警報又は通知を発する機能を有し、この場合において、業務前自動点呼を中止する機能を有すること。 |
⑦ | 運転者等が従事した運行の業務に係る事業用自動車、道路及び運行の状況及び交替する運転者等に対する通告について、運転者等が口頭で報告した内容を電磁的方法により記録し、運行管理者等が確認できる機能を有すること。 |
⑧ | 運転者による健康状態測定機能(運転者の体温及び血圧を測定する機能をいう。以下同じ。)の使用前又は使用中に当該運転者について生体認証符号等を使用する方法により確実に識別する機能を有し、生体認証符号等による識別が行われた場合に、健康状態測定機能が作動する機能を有すること。ただし、項目③又は項目④の生体認証符号等による識別の直後に健康状態測定機能を使用する場合には、本項目の生体認証符号等による識別は、省略することができる。 |
⑨ | 健康状態測定機能による測定値と運行管理者があらかじめ設定した運転者ごとの平時の値の差異を自動的に記録及び保存する機能を有するとともに、測定値の有効時間を設定することができ、当該有効時間を経過した測定値は無効として再測定を求める機能を有すること。 |
⑩ | 運転者の疾病、疲労、睡眠不足その他の理由により安全な運転をすることができないおそれの有無に係る申告の結果を記録及び保存する機能を有すること。 |
⑪ | 項目⑨・⑩の結果から安全な運転をすることができないおそれの有無について自動で判定を行う機能を有すること。この場合において、項目⑧に基づく判定の基準については、運行管理者が運転者ごとに設定することができる機能を有すること。 |
⑫ | 項目⑪の結果、安全な運転をすることができないおそれがあると判定された場合には、直ちに運行管理者に対し警報又は通知を発する機能を有し、この場合において、業務前自動点呼を中断する機能を有すること。 |
⑬ | 項目⑫により業務前自動点呼が中断された場合には、運行管理者等が同号の判定に至った内容を確認し、運行管理者が運行の安全を確保することができると判断した場合に限り、運行管理者が業務前自動点呼を再開することができる機能を有し、業務前自動点呼が再開された旨、自動的に記録及び保存する機能を有すること。 |
⑭ | 項目⑬の機能により業務前自動点呼を再開する場合において、生体認証符号等による識別が行われた場合に限り、業務前自動点呼を中断した時点から再開することができる機能を有すること。 |
⑮ | 灯火装置の点灯、制動装置の作動その他の日常的に点検すべき事項の点検の結果を記録及び保存する機能を有すること。 |
⑯ | 特定自動運行保安員にあっては、特定自動運行事業用自動車による運送を行うために必要な自動運行装置の設定の状況に関する確認の結果を記録及び保存する機能を有すること。 |
⑰ | 項目⑮・⑯の結果、異常が認められた場合には、直ちに運行管理者に対し警報又は通知を発する機能を有し、この場合において、業務前自動点呼を中止する機能を有すること。 |
⑱ | 運行管理者が運転者等に対して伝える指示事項を、当該運転者等ごとに画面表示又は音声により伝達する機能を有すること。 |
⑲ | 項目⑳に掲げる業務前自動点呼に必要な全ての確認、判断及び記録がなされた場合には、業務前自動点呼が完了した旨を運転者等が明瞭に確認することができる表示がなされる機能を有し、当該確認、判断及び記録がなされない場合又は故障が生じている場合には、業務前自動点呼を完了することができない機能を有すること。 |
⑳ | 運転者等ごとに業務前自動点呼の実施予定時刻を設定することができ、当該実施予定時刻から事業者があらかじめ定めた時間を経過しても業務前自動点呼が完了しない場合には、運行管理者等に対し警報又は通知を発する機能を有すること。 |
㉑ | 業務前自動点呼を受けた運転者等ごとに、次に掲げる事項を電磁的方法により記録し、かつ、その記録を一年間保存する機能を有すること。 (イ)業務前自動点呼に責任を負う運行管理者の氏名 (ロ)業務前自動点呼を受けた運転者等の氏名 (ハ)業務前自動点呼を受けた運転者等が従事しようとする運行の業務に係る事業用自動車の自動車登録番号又は車両番号その他の当該事業用自動車を識別できる表示 (二)業務前自動点呼の実施日時 (ホ)点呼の方法 (ヘ)運転者にあっては、業務前自動点呼を受けた運転者のアルコール検知器による測定結果及び酒気帯びの有無 (ト)運転者にあっては、業務前自動点呼を受けた運転者のアルコール検知器の使用に係る生体認証符号等による識別時及びアルコール検知器による測定時の、当該運転者の顔が明瞭に確認できる静止画又は動画 (チ)運転者等が業務前自動点呼を受けている状況が明瞭に確認できる静止画又は動画 (リ)運転者等が従事する運行の業務に係る事業用自動車内、待合所、宿泊施設その他これらに類する場所において業務前自動点呼を行う場合にあっては、運転者等が点呼を受けた場所 (ヌ)運転者にあっては、業務前自動点呼を受けた運転者の体温及び血圧の測定値と運行管理者又は貨物軽自動車安全管理者があらかじめ設定した運転者ごとの平時の値の差異 (ル)運転者にあっては、業務前自動点呼を受けた運転者の疾病、疲労、睡眠不足その他の理由により安全な運行をすることができないおそれの有無についての確認の結果 (ヲ)運転者にあっては、道路運送車両法第47条の2第1項及び第2項の規定による点検の結果 (ワ)特定自動運行保安員にあっては、特定自動運行事業用自動車による運送を行うために必要な自動運行装置の設定の状況に関する確認の結果 (カ)運行管理者が運転者等に対し伝える指示事項 (ヨ)業務前自動点呼を中断し、再開した場合にあっては、当該中断に至った判定結果及び再開の判断を行った運行管理者の氏名 (タ)運行管理者又は貨物軽自動車安全管理者が、当該運転者等が事業用自動車の運行の業務に従事することができないと判断した場合の理由及び代替措置の内容 (レ)その他必要な事項 |
㉒ | 業務前自動点呼機器が故障した場合、故障発生日時及び故障内容を電磁的方法により記録し、その記録を一年間保存する機能を有すること。 |
㉓ | 電磁的方法により記録された項目⑳に掲げる事項及び項目㉒の記録の修正若しくは消去ができないものであること又は電磁的方法により記録された項目⑳に掲げる事項及び項目㉒の記録が修正された場合においては修正前の情報が保存され、かつ、消去できないものであること。 |
㉔ | 電磁的方法により記録された項目⑳に掲げる事項(ト及びチを除く。)及び項目㉑の記録について、業務前自動点呼機器に保存された情報をCSV形式で、電磁的記録として出力する機能を有すること。 |
2.施設・環境要件
業務前自動点呼を実施するための施設や環境を整えましょう。
なりすまし、アルコール検知器及び健康状態測定機能に係る機器の不正使用並びに点呼告示第8条各号に掲げる場所(運転者等の属する営業所又は当該営業所の車庫、運転者等が従事する運行の業務に係る事業用自動車内、待合所、宿泊施設その他これらに類する場所)以外で自動点呼が行われることを防止するため、ビデオカメラその他の撮影機器により、運行管理者等が自動点呼を受ける運転者等の全身を自動点呼の実施中又は終了後に明瞭に確認することができること。 |
3.運用上の遵守事項
業務前自動点呼の運用に関しては、下記要件を遵守する必要があります。社内でマニュアル等を作成するなどして遵守できる体制を作りましょう。
➀ | 事業者は、業務前自動点呼の運用に関し必要な事項について、あらかじめ運行管理規程に明記すること。 |
② | 事業者は、業務前自動点呼の運用に関し必要な事項について、運行管理者等、運転者等その他の関係者に周知すること。 |
③ | 事業者は、業務前自動点呼機器の使用方法、故障時の対応等について運行管理者、運転者等その他の関係者に対し、適切に教育及び指導を行うこと。 |
④ | 事業者は、運転者等の属する営業所又は当該営業所の車庫において業務前自動点呼を行う場合には、当該場所以外で業務前自動点呼が行われることを防止するため、業務前自動点呼機器が業務前自動点呼実施場所から持ち出されないよう必要な措置を講じること。 |
⑤ | 事業者は、業務前自動点呼機器を適切に使用、管理及び保守することにより、常に正常に作動する状態に保持すること。 |
⑥ | 運行管理者等は、運転者等ごとに、あらかじめ業務前自動点呼の実施予定を業務前自動点呼機器に入力し、業務前自動点呼の実施結果を適宜確認し、点呼の未実施を防止すること。 |
⑦ | 業務前自動点呼を実施する予定時刻から事業者があらかじめ定めた時間を経過しても業務前自動点呼が完了しない場合には、運行管理者等が適切な措置を講じることができる体制を整備すること。 |
⑧ | 事業者は、運転者等が携行品を確実に返却したことを確認できる体制を整備すること。 |
⑨ | 事業者は、運行管理者等及び運転者等の間で早急に報告する必要がある事項については、業務前自動点呼の実施にかかわらず、両者間で速やかに報告するよう指導すること。 |
⑩ | 運転者が酒気を帯びていることが確認された場合は、運行管理者が当該運転者の状態を確認するための適切な措置を講じることができる体制を整備すること。 |
⑪ | 運転者が安全な運転をすることができないおそれがあると業務前自動点呼機器によって判定された場合は、運行管理者が当該運転者の状態を確認するための適切な措置を講じることができる体制を整備すること。 |
⑫ | 灯火装置の点灯、制動装置の作動その他の日常的に点検すべき事項の点検の結果に異常が認められた場合、運行管理者が適切な措置を講じることができる体制を整備すること。 |
⑬ | 特定自動運行保安員に対して点呼を行うにあたっては、特定自動運行事業用自動車による運送を行うために必要な自動運行装置の設定の状況に関する確認の結果に異常が認められた場合に、運行管理者が適切な措置を講じることができる体制を整備すること。 |
⑭ | 業務前自動点呼機器の故障等により業務前自動点呼を行うことが困難となった場合に、業務前自動点呼を受ける運転者等の属する営業所の運行管理者等による対面点呼その他の実施が認められている点呼を行う体制を整えること。 |
⑮ | 事業者は、運転者等(以下この項目において「対象者」という。)の識別に必要な生体認証符号等、あらかじめ、対象者の同意を得ること。 |
⑯ | 業務前自動点呼を行う運行管理者等は、運転者等が従事する運行の業務に係る事業用自動車内、待合所、宿泊施設その他これらに類する場所において運転者等が業務前自動点呼を受ける場合にあっては、あらかじめ当該運転者等を選任している事業者が定めた場所で業務前自動点呼を受けていることを、当該業務前自動点呼の実施中又は終了後に静止画又は動画により確認すること。 |
管轄運輸支局への届出
業務前自動点呼を実施するための3つの要件を満たした後は、業務前自動点呼を実施する営業所の管轄運輸支局へ届出書と必要な添付書類を提出すれば完了となります。
業務前自動点呼を複数の営業所で実施する場合
<例>
埼玉と神奈川の営業所で業務前自動点呼を実施する場合は、埼玉運輸支局及び神奈川運輸支局へそれぞれ提出する必要があります。
添付書類について
・非常時に対面点呼又は実施が認められている点呼を行うことができる体制が分かる書類
・自動点呼機器の設置場所及び設置の状況が分かる書類(営業所又は車庫で実施する場合)
・監視カメラの設置場所が分かる書類(監視カメラを使用する場合)
事前の届出
業務前自動点呼実施予定日の原則10日前までに提出となります。
業務前自動点呼の実施に係る届出書
自動点呼届出用紙