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貸切バス 巡回指導でチェックされる指導項目は?最新情報を解説します。

貸切バスの事業者様は、一般貸切旅客自動車運送適正化機関による巡回指導の対象となっており、ほぼ毎年、巡回指導を受けていると思われます。稀に、この巡回指導のことを監査だと思われている事業者様がいらっしゃいますが、巡回指導と監査は別物です。今回は、巡回指導について詳しく解説していきます。

巡回指導について

巡回指導の実施者

一般貸切旅客自動車運送適正化機関(関東運輸局管内では、一般社団法人関東貸切バス適正化センター)

巡回指導の目的

適正化機関の巡回指導は、悪質業者の国への通報及び事業者の法令遵守状況の継続的な確認を通じて、国の監査機能を補完し業界の自主的改善を促進することにより、貸切バス事業における事故防止を徹底し業界全体の安全意識を向上させることを目的としています。

巡回指導の体制

巡回指導は、原則、適正化事業指導員2名1組の体制で、事業者の営業所を直接訪問して実施します。

巡回指導の頻度

巡回指導は、適正化機関の事業区域内にある全ての営業所に対し、原則、毎年度1回実施されます。

巡回指導の通知

事前に巡回指導対象事業者に対して適正化機関による巡回指導が実施される旨の通知が届きます。

巡回指導でチェックされる指導項目

巡回指導時における指導項目は下記内容となり、評価基準に基づき「適」又は「否」として判定されます。
「否」と判定された項目があった場合は、巡回指導の翌日から起算して原則30日以内に「否」と判定された項目に係る関係書類を適正化機関に提出し、改善状況を報告しなければなりません。

1.事業計画等

①主たる事務所及び営業所の名称、位置

許可を受けた時点と変更ありませんか?変更している場合、変更手続きを行っていますか?

☑主たる事務所及び営業所の名称変更は、事業計画変更届出が必要です。
☑主たる事務所の位置変更は、事業計画変更届出が必要です。
☑営業所の位置変更は、事業計画変更認可申請が必要です。

②営業所に配置する事業用自動車の数

管轄支局で登録されている種別、台数と実際に営業所にある種別、台数に違いはありませんか?

☑直近で管轄運輸支局へ届出している事業計画変更届出書(増減車等)を確認してみましょう。

③自動車車庫の位置及び収容能力

許可を受けた時点と変更ありませんか?変更している場合、変更手続きを行っていますか?

☑車庫の位置及び収容能力の変更は、事業計画変更認可申請が必要です。

④乗務員等の休憩、睡眠施設の位置及び収容能力

許可を受けた時点と変更ありませんか?変更している場合、変更手続きを行っていますか?

☑休憩、睡眠施設の位置及び収容能力の変更は、施行規則第66条第1項の届出が必要です。

⑤乗務員等の休憩、睡眠施設の保守及び管理

乗務員等がいつでも有効に使用できる状況となっていますか?

☑寝具等を備付け、仮眠又は睡眠施設として清潔かつ安全に常時使用できるように管理しましょう。

⑥名義貸し及び事業の貸渡し等

車両の名義貸し、事業の貸渡しを行っていませんか?

2.帳票等の整備・報告等

①事故の記録、保存

事故記録簿を備えていますか?

☑記録の内容(乗務員氏名・車番、発生日時・場所、当事者(相手方等)、事故概要、原因、再発防止対策)は適切に記載しましょう。
☑事故記録の保存期間は、3年間です。

②自動車事故報告書の提出

自動車事故報告規則に該当する事故の報告をしていますか?

☑該当する事故が発生した日より、30日以内に管轄支局へ提出が必要です。
☑速報に該当する場合は、事故・事件発生から24時間以内に速報が必要です。

③乗務員等台帳の備付、記載、保存

必要な項目が全て記載された乗務員等台帳を備えていますか?

☑退職者等の台帳に理由等を記載し、3年間保存が必要です。
☑必要に応じて、適性診断書、教育記録簿、健康診断書等を添付しましょう。

④車両台帳及び車検証(写)又は自動車検査証記録事項の保管

車両台帳を備え、適切な管理を行っていますか?

☑車両台帳、車両毎の有効な自動車検査証(写)又は自動車検査記録事項を事務所内に備え置きましょう。

⑤事業報告書、輸送実績報告書の提出

事業報告書及び事業実績報告書を定められた期限までに、管轄運輸支局へ提出していますか?

☑事業報告書は、毎事業年度の経過後100日以内に提出が必要です。
☑事業実績報告書は、毎年4月1日から翌3月31日までの期間に係るものを5月31日までに提出が必要です。

3.運行管理等

①運行管理規程の制定及び改正

運行管理規程を備えていますか?

☑法改正を反映し、最新の内容となっていること(改正日の記入があること。)

②運行管理者の選任、届出

運行管理者の選任や解任があった際に、管轄運輸支局へ運行管理者選任又は解任届出をしていますか?

☑車両数に応じた運行管理者の数が必要です。
☑複数の運行管理者を選任する営業所にあっては、統括運行管理者を選任する必要があります。
☑原則、運行管理者選任解任届出は、選任解任後15日以内に届出が必要です。

③運行管理補助者の選任、届出

運行管理補助者の選任や解任があった際に、管轄運輸支局へ運行管理補助者選任又は解任届出をしていますか?

☑原則、運行管理補助者選任解任届出は、選任解任後15日以内に届出が必要です。

④運行管理者講習の受講

国土交通大臣の認定を受けた講習を、所定の期間に受けていますか?

☑選任されている運行管理者は、2年に1回、国土交通大臣の認定を受けた講習を受ける必要があります。
☑始めて選任された運行管理者は、選任された年度内に国土交通大臣の認定を受けた講習を受ける必要があります。
☑特別講習の通知があった場合、対象者は、国土交通大臣の認定を受けた講習を受ける必要があります。

⑤事業計画に必要な運転者の選任、確保

事業計画に必要な運転者を確保していますか?(事業用自動車の数と運転者の数が同等かそれ以上か)

☑日雇いの人は、選任できません。
☑二ヵ月以内の期間契約社員は、選任できません。
☑試みの使用期間中の人(ただし、14日を超えた人は大丈夫です。)は、選任できません。

⑥運転者の勤務時間・乗務時間の適正な管理

拘束時間、休息期間、運転時間等が改善基準告示に違反していませんか?

☑適正な乗務割表を作成する必要があります。
☑適性な労務管理を行う必要があります。

⑦点呼の実施及び記録、保存

点呼(業務前、業務後、業務途中)を適切に実施していますか?

☑点呼状況の録音及び録画(電話点呼は録音のみ)をして、電磁的方法により記録し、記録日がいつであるか分かるようにして、その記録を90日間保存する必要があります。
☑点呼の映像は、運転者に点呼を実施している様子が確認できる映像であること。(運転者の識別が可能なものに限る)
☑運行管理者は、全点呼回数の3分の1以上を実施する必要があります。
☑点呼記録簿に漏れなく適切に記録し、点呼を実施した日から1週間以内に電磁的方法により保存し、これを3年間保存する必要があります。

⑧アルコール検知器の使用

常時有効保持されたにアルコール検知器を適切に使用していますか?

☑アルコール検知器を用いて呼気の検査を行っている状況の写真(動画も可)を撮影して、電磁的方法により記録し、記録日がいつであるか分かるようにして、その記録を90日間保存する必要があります。

⑨業務等の記録、保存

運行指示が変更になった場合の記載や2名乗務の際の運転者交替地点、日時、宿泊先の名称及び位置などの必要な項目が全て記録されていますか?

☑業務等の記録(運転日報)は、3年間保存する必要があります。

⑩運行記録計による記録、保存、活用

必要な項目が記録され、記録の分析、指導(連続運転、速度超過等)を適切に実施し、指導内容を記録していますか?

☑デジタル式運行記録計により記録する必要があります。(自動車の構造上の理由により運行記録計を備えることが困難な場合を除く。令和6年3月31日以前に登録を受けた車両は、令和7年3月31日までは、アナログ式のままでも可。)

☑運行記録計による記録は、3年間保存する必要があります。

⑪運行指示書の作成、指示、携行、保存

改善基準告示に違反するような指示がなく、必要な項目が全て記載された指示書を携行させていますか?

☑当初の運行指示と異なる運行となった場合、その措置が適正に行われ、その内容を記録する必要があります。
☑運行指示書は、運行の終了の日から3年間保存する必要があります。

⑫特定の運転者(事故惹起運転者・初任運転者・高齢運転者)の適性診断

必要な適性診断を適切な時期に受診させていますか?

☑初任診断は、運転者として新たに雇い入れた者に、運転者に選任する前に受診させる必要があります。(対象は、初任運転者)
☑適齢診断は、65歳に達した日から1年以内、以後3年以内ごと。75歳に達した日から1年以内、以後1年以内ごとに受診させる必要があります。(対象は、高齢運転者)
☑特定診断Ⅰは、死者又は重傷者を生じた交通事故を引き起こし、かつ、当該事故前の1年間に交通事故を引き起こしたことがない者及び軽傷者を生じた交通事故を引き起こし、かつ、当該事故前の3年間に交通事故を引き起こしたことがある者に再度乗務する前に受診させる必要があります。(対象は、事故惹起運転者)
☑特定診断Ⅱは、死者又は重傷者を生じた交通事故を引き起こし、かつ、当該事故前の1年間に交通事故を引き起こしたことがある者に再度乗務する前に受診させる必要があります。(対象は、事故惹起運転者)

運転者として新たに雇い入れた者(初任運転者)が、事故惹起運転者や高齢運転者の対象となる場合の優先順位は、①特定診断Ⅰ又はⅡ②適齢診断③初任診断の順番になります。
<例>
運転者として新たに雇い入れた者(初任運転者)が、事故惹起運転者かつ高齢運転者(65歳以上の者)に該当する場合は、特定診断Ⅰ又はⅡを受診させます。

⑬特定の運転者(事故惹起運転者・初任運転者・高齢運転者)に対する特別な指導

指導の実施時期、内容、時間は適切に行われていますか?

☑初任運転者は、必須座学6項目(10時間以上)実技(20時間以上)を選任前に実施する必要があります。
☑高齢運転者は、受診した適齢診断の結果判明した後1ヵ月以内に実施する必要があります。
☑事故惹起者は、必須座学6項目(10時間以上)実技(20時間以上)を再乗務する前に実施する必要があります。
☑準初任運転者は、必須座学2項目(適切な時間)実技(20時間以上)を乗務前に実施する必要があります。
☑指導教育の記録は、3年間保存する必要があります。
※各必須座学は、「運転者の指導監督の指針」に基づいて実施しましょう。

<Click>特定の運転者に対する特別な指導についての詳細はこちらをご確認ください。

⑭運転者に対する指導教育の実施

毎年、年間教育計画を策定し必要な指導及び監督を実施していますか?

☑指導内容は、「運転者の指導監督の指針」に基づいた13項目を実施する必要があります。
☑全運転者に漏れなく実施する必要があります。参加できなかった場合は、後日フォロー教育をしましょう。
☑指導教育の記録は、3年間保存する必要があります。(指導教育に使用した教材、資料も保存しましょう。)

<Click>運転者に対する指導教育の実施についての詳細はこちらをご覧ください。

⑮乗務員等の服務規程(規律)の制定

乗務員等の服務規律を制定していますか?

☑規定内に「安全確保のための遵守事項」「服務(運輸規則第49条から第51条)」「禁止行為」等を定めておきましょう。
☑法改正を反映した最新の内容にしましょう。

4.運送引受書及び営業区域・運賃

①運送引受書の作成、交付、保存

必要な項目の全てが記載された適正な運送引受書を作成し、申込者に交付していますか?

☑運送引受書は、運送終了の日から3年間保存する必要があります。

②営業区域の遵守

営業区域外の運送を行っていませんか?

☑発地及び着地のいずれもがその営業区域外に存する旅客の運送をしてはいけません。

③届出済み運賃の適正な収受

運賃額は、下限運賃を下回っていませんか?

☑手数料の支払いがある場合は、その手数料が適正であるか確認しましょう。
☑手数料又はこれに類するものを支払った場合には、その額を記載した書類を運送引受書と共に運送終了の日から3年間保存する必要があります。

<Click>手数料が適正かどうかについての確認は、こちらをご覧ください。

5.車両管理等

①整備管理規程の制定

整備管理規程を備えていますか?

☑法改正を反映し、最新の内容となっていること(改正日の記入があること。)

②整備管理者の選任、届出

整備管理者の選任や解任があった際に、管轄運輸支局へ整備管理者選任又は解任届出をしていますか?

☑原則、整備管理者選任解任届出は、選任解任後15日以内に届出が必要です。

③整備管理者研修の受講

地方運輸局長が行う研修を、所定の期間に受けていますか?

☑選任されている整備管理者は、2年に1回、地方運輸局長が行う研修を受ける必要があります。
☑始めて選任された整備管理者は、選任された年度の翌年度末迄に地方運輸局長が行う研修を受ける必要があります。

④日常点検の実施、確認

日常点検基準を作成し、日常点検を適正に行っていますか?

☑1日1回、その運行の開始前において、目視等により日常点検を実施する必要があります。
☑点検結果は、整備管理者又は補助者の確認が必要です。

⑤定期点検整備の実施、点検整備記録簿の保存

定期点検基準を作成し、定期点検を適正に行っていますか?また、その記録(写)を営業所で保管していますか?

☑適正な3ヵ月点検及び12ヵ月点検を実施する必要があります。
☑点検整備記録簿は1年間保存する必要があります。

6.労働基準法等

①就業規則の制定、届出

就業規則を制定し、管轄労働局へ届出をしていますか?

☑従業員10人以上の事業所の場合は、就業規則の制定と管轄労働局への届出が必要です。
☑法改正を反映し、最新の内容となっていること(改正日の記入があること。)

36協定の締結、届出

36協定を締結し、管轄労働局へ届出をしていますか?

☑1日8時間、週40時間の法定労働時間を超えて残業を課す場合は、36協定の締結及び届出が必要です。

法定の健康診断の受診、結果の記録・保存

全運転者に所定の健康診断を受診させていますか?

☑雇い入れ時や年に1回(夜間従事者は、6ヵ月以内毎に1回)健康診断の受診が必要です。
☑健康診断結果は5年間の保存が必要です。

7.保険加入及び社会保険加入等

賠償責任保険等の加入

任意の損害賠償保険に加入していますか?

☑対人は無制限、対物は200万円以上の契約が必要です。

②労災保険、雇用保険、健康保険及び厚生年金保険の加入

労災保険及び雇用保険、健康保険及び厚生年金保険に加入していますか?

☑労災保険は、原則、雇用形態、勤務形態にかかわらず、全ての労働者が加入対象となります。
☑雇用保険は、原則、1週間の所定労働時間が20時間以上かつ31日以上継続して雇用が見込まれる場合は加入対象となります。
☑健康保険・厚生年金保険は、原則、1ヵ月の所定労働時間数及び1週所定労働時間が、常時雇用者の4分の3以上である場合は、対象となります。

8.苦情処理

①苦情処理、弁明

苦情処理簿を備えていますか?

☑記録の内容(苦情の内容、原因究明の結果、苦情に対する弁明の内容、改善措置、処理担当者)を適切に記載しましょう。
☑苦情処理簿は、1年間の保存が必要です。

9.運輸安全マネジメント

①安全管理規程の制定、届出

安全管理規程を備えていますか?

☑安全管理規定の内容は、必要に応じて見直しを行いましょう。

②安全統括管理者の選任、届出

安全統括管理者が変更になった場合は、変更手続きを行っていますか?

③輸送の安全にかかわる情報の公表及び国への報告

輸送の安全にかかわる情報をホームページ、来客窓口等へ公表していますか?

☑安全情報報告書は、毎事業年度の経過後100日以内に提出が必要です。

<Click>公表すべき輸送の安全に係わる事項についての詳細はこちらをご覧ください。

10.その他

①営業所に運賃・料金及び運送約款の掲示並びに、ウェブサイトへ運賃・料金及び運送約款の掲載

運賃・料金・運送約款を営業所の見やすい場所に掲示するとともに、ウェブサイトにも掲載していますか?

☑以下のいずれかに該当する場合は、ウェブサイトへの掲載は対象外となります。
・一般貸切旅客自動車運送事業に常時使用する従業員の数が20人以下である場合
・自ら管理するウェブサイトを有していない場合

②車体の外側表示

全ての車両の外側へ、使用者の氏名、名称又は記号、「貸切」の表示を行っていますか?

③車内表示、応急用器具等の備付け

全ての車内に、事業者の氏名又は名称、自動車登録番号、禁煙表示を見やすいように表示していますか?

☑全ての自動車に応急器具等(応急修理に必要な器具、部品、非常用信号用具等)を備える必要があります。
☑自動車検査証(本通)、点検整備記録簿(本通)は車内への備付けが必要です。

巡回指導後の運輸局等への報告・通知について

定期報告

巡回指導により法令違反が確認された事業者(速報対象者を除く)であって改善報告を行わない者又は改善報告に未改善事項が確認された者については、改善報告提出期限の属する月の翌月末までに当月分を取りまとめのうえ地方運輸局等に報告されます。

通知

手数料等(名目に関わらず、運送の引受けに際して旅行業者等(旅行サービス手配業者も含む)に支払う金銭のことをいう。)の支払いにより、届出運賃・料金の下限を下回っている事案は、当月分を取りまとめのうえ、翌月10日までに地方運輸局等へ通知されます。

速報

次のいずれかに該当する場合は、定期報告によらず直ちに地方運輸局等へ報告が行われます。

①正当な理由なく巡回指導を拒否した場合
②輸送の安全に関わる緊急を要する重大な法令違反で次のいずれかに該当する場合
(ア)運行管理者が全く不在(選任なし)の場合
(イ)全ての運転者が健康診断を受診していない場合
(ウ)運転者に対する指導監督及び特別な指導を全く実施していない場合
(エ)整備管理者が全く不在(選任なし)の場合で、事業用自動車の定期点検整備を全く実施していない場合

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