遠隔点呼の制度自体は、令和4年4月から始まりました。現在に至るまで短いスパンで何度か変更があったため、ルールや具体的な機器要件等が分かりずらいと感じた方が多いのではないでしょうか?今回は、そんな遠隔点呼の最新要件等を解説してきたいと思います。
遠隔点呼の実施場所について
運行管理者が遠隔点呼を行うことが可能な場所
点呼を行う運行管理者等がいる自社営業所又は自社営業所の車庫
運転者が遠隔点呼を受けることが可能な場所
①自社営業所又は当該営業所の車庫
②完全子会社等の営業所又は当該営業所の車庫
③運転者等が従事する運行の業務に係る事業所用自動車内、待合所、宿泊施設その他これらに類する場所
<遠隔点呼の例>
遠隔点呼機器の機能要件
遠隔点呼機器は、次に掲げる要件を満たすものでなければなりません。業務後自動点呼の機器と違い、国土交通省の認定機器はありませんので、機器の選定等については注意が必要です。
遠隔点呼機器は、次に掲げる要件を満たすものでなければなりません。
一 遠隔点呼を行う運行管理者又は補助者(以下「運行管理者等」という。)が次に掲げる事項について、映像と音声の送受信により通話することができる方法によって、随時明瞭に確認できる機能を有すること。 イ 運転者等の顔の表情 ロ 運転者等の全身 ハ 運転者の酒気帯びの有無 ニ 運転者の疾病、疲労、睡眠不足その他の理由により安全な運転をすることができないおそれの有無 |
二 運転者が行うアルコール検知器による測定の結果検知された呼気中のアルコールの有無又はその濃度を自動的に記録及び保存するとともに、遠隔点呼を行う運行管理者等が当該測定結果を直ちに確認できる機能を有すること。 |
三 遠隔点呼を行う運行管理者等及び遠隔点呼を受ける運転者等について、生体認証符号等(指紋や静脈、声等身体の一部やそれに準ずる要素を使って本人を特定する仕組み)を使用する方法により確実に個人を識別する機能を有すること。 |
四 次のイからトまでに掲げる事項が遠隔点呼実施地点間で共有され、当該事項について遠隔点呼時に遠隔点呼を行う運行管理者等が確認できる機能を有すること。 イ 運転者等の日常の健康状態 ロ 運転者等の労働時間 ハ 運転者等に対する指導監督の記録 ニ 運行に要する携行品(以下単に「携行品」という。) ホ 乗務員等台帳の内容 ヘ 運転者等に対する過去の点呼記録 ト 運行に使用する事業用自動車の整備状況 |
五 遠隔点呼を行う運行管理者等が、遠隔点呼を受ける運転者の疾病、疲労、睡眠不足その他の理由により安全な運転をすることができないおそれの有無を、平常時と比較して確認できる機能を有すること。 |
六 遠隔点呼を行う運行管理者等が、道路運送車両法第四十七条の二第一項及び第二項の規定による点検(日常点検)の結果を確認できる機能を有すること。 |
七 遠隔点呼を行う運行管理者等が、遠隔点呼を受ける運転者等に伝達すべき事項を確認できる機能を有すること。 |
八 遠隔点呼を受けた運転者等ごとに、次のイからニまでに掲げる事項を電磁的方法により記録し、遠隔点呼実施地点間で共有するとともに、その記録を一年間保存する機能を有すること。(貸切バスの場合、点呼等の記録として使用する際は、三年間保存できるようにしておきましょう。) イ 業務前の遠隔点呼に係る事項 (1)遠隔点呼を行った者の氏名 (2)遠隔点呼を受けた運転者等の氏名 (3)遠隔点呼を受けた運転者等が従事する運行の業務に係る事業用自動車の自動車登録番号その他の当該事業用自動車を識別できる記号、番号等 (4)遠隔点呼の日時 (5)点呼の方法 (6)運転者にあっては、遠隔点呼を受けた運転者のアルコール検知器による測定結果及び酒気帯びの有無 (7)運転者にあっては、遠隔点呼を受けた運転者のアルコール検知器使用時の静止画又は動画 (8)運転者にあっては、遠隔点呼を受けた運転者の疾病、疲労、睡眠不足その他の理由により安全な運転をすることができないおそれの有無についての確認の結果 (9)道路運送車両法第四十七条の二第一項及び第二項の規定による点検(日常点検)の結果 (10)特定自動運行保安員にあっては、特定自動運行事業用自動車による運送を行うために必要な自動運行装置の設定の状況に関する確認の結果 (11)運行管理者が運転者等に対し伝える指示事項 (12)運行管理者が、当該運転者等が事業用自動車の運行の業務に従事することができないと判断した場合の理由及び代替措置の内容 (13)運転者等が従事する業務に係る事業所用自動車内、待合所、宿泊施設その他これらに類する場所において遠隔点呼を行う場合にあっては、運転者等が点呼を受けた場所 (14)その他必要な事項 ロ 業務後の遠隔点呼に係る事項 (1)遠隔点呼を行った者の氏名 (2)遠隔点呼を受けた運転者等の氏名 (3)遠隔点呼を受けた運転者等が従事する運行の業務に係る事業用自動車の自動車登録番号その他の当該事業用自動車を識別できる記号、番号等 (4)遠隔点呼の日時 (5)点呼の方法 (6)運転者にあっては、遠隔点呼を受けた運転者のアルコール検知器による測定結果及び酒気帯びの有無 (7)運転者にあっては、遠隔点呼を受けた運転者のアルコール検知器使用時の静止画又は動画 (8)遠隔点呼を受けた運転者等が従事する運行の業務に係る事業用自動車、道路及び運行の状況 (9)交替する運転者等に対する通告 (10)運転者等が従事する業務に係る事業所用自動車内、待合所、宿泊施設その他これらに類する場所において遠隔点呼を行う場合にあっては、運転者等が点呼を受けた場所 (11)その他必要な事項 ハ 業務途中の遠隔点呼に係る事項 (1)遠隔点呼を行った者の氏名 (2)遠隔点呼を受けた運転者等の氏名 (3)遠隔点呼を受けた運転者等が従事する運行の業務に係る事業用自動車の自動車登録番号その他の当該事業用自動車を識別できる記号、番号等 (4)遠隔点呼の日時 (5)点呼の方法 (6)遠隔点呼を受けた運転者等が従事する運行の業務に係る事業用自動車、道路及び運行の状況 (7)運転者にあっては、遠隔点呼を受けた運転者の疾病、疲労、睡眠不足その他の理由により安全な運転をすることができないおそれの有無についての確認の結果 (8)運行管理者が運転者等に対し伝える指示事項 (9)運転者等が点呼を受けた場所 (10)その他必要な事項 |
九 遠隔点呼機器の故障が発生した場合、故障発生日時及び故障内容を電磁的方法により記録し、その記録を一年間保存する機能を有すること。 |
十 電磁的方法により記録された八に掲げる事項及び九の記録の修正若しくは消去ができないこと又は電磁的方法により記録されたハに掲げる事項及び九の記録が修正された場合においては修正前の情報が保存され、かつ消去できない機能を有すること。 |
十一 電磁的方法により記録された八(イ(7)及びロ(7)を除く。)に掲げる事項及び九の記録について、遠隔点呼機器に保存された情報をCSV形式で、電磁的記録として出力する機能を有すること。 |
遠隔点呼機器を設置する施設及び環境の要件
遠隔点呼機器を設置する施設及び環境は、次に掲げる要件を満たすものでなければなりません。
一 遠隔点呼を行う運行管理者等が次に掲げる事項について、映像と音声の送受信により通話をすることができる方法によって、随時明瞭に確認できる環境照度が確保されていること。 イ 運転者等の顔の表情 ロ 運転者等の全身 ハ 運転者の酒気帯びの有無 ニ 運転者の疾病、疲労、睡眠不足その他の理由により安全な運転をすることができないおそれの有無 |
二 なりすまし、アルコール検知器の不正使用及び自社営業所又は当該営業所の車庫、完全子会社等の営業所又は当該営業所の車庫、運転者等が従事する運行の業務に係る事業所用自動車内、待合所、宿泊施設その他これらに類する場所以外での遠隔点呼の実施を防止するため、ビデオカメラその他の撮影機器により、運行管理者等が遠隔点呼を受ける運転者等の全身を遠隔点呼の実施中に随時明瞭に確認することができること。(以前は義務だった監視カメラの設置が不要となりました。) |
三 遠隔点呼が途絶しないために必要な通信環境を備えていること。 |
四 遠隔点呼を行う運行管理者等と遠隔点呼を受ける運転者等との対話が妨げられないようにするために必要な通話環境が確保されていること。 |
遠隔点呼実施時の遵守事項
遠隔点呼を行うときは、次に掲げる事項を遵守しなければなりません。
一 遠隔点呼を行う運行管理者等は、地理情報及び道路交通情報等、事業用自動車の運行の業務を遂行するために必要な情報を有すること。 |
二 遠隔点呼を行う運行管理者等は、面識のない運転者等に対し遠隔点呼を行う場合は、あらかじめ当該運転者等と対面又は映像と音声の送受信により通話することができる方法で面談する機械を設け、次に掲げる事項について確認を行うこと。 イ 運転者等の顔の表情 ロ 運転者にあっては、健康状態 ハ 運転車にあっては、適性診断の受診の結果 ニ その他遠隔点呼を実施するために必要な事項 |
三 遠隔点呼を行う運行管理者等は、遠隔点呼を漏洩なく行うため、運行中の事業用自動車の位置の把握に努めること。 |
四 遠隔点呼を行う運行管理者等は、遠隔点呼を受ける運転者等の携行品の保持状況又は返却状況を確認すること。 |
五 遠隔点呼を行う運行管理者は、運転者等が事業用自動車の運行の業務に従事することができないと判断した場合、直ちに当該運転者等の属する営業所の運行管理者等に連絡すること。 |
六 五の場合にあっては、事業者は、遠隔点呼を行う運行管理者が事業用自動車の運行の業務に従事することができないと判断した運転者等の属する営業所において、代替措置を講じることができる体制を整えること。 |
七 遠隔点呼機器の故障等により遠隔点呼を行うことが困難になった場合にあっては、遠隔点呼を受ける運転者等の属する営業所の運行管理者等による対面点呼その他の当該営業所で実施が認められている点呼を行うことができる体制を整えること。 |
八 完全子会社等との間で遠隔点呼を行う場合は、必要に応じ、事業者及び完全子会社等の間において遠隔点呼の実施に必要な事項に係る契約を締結すること。 |
九 事業者は、運行管理者等及び運転者等(以下ここでは「対象者」という。)の識別に必要な生体認証符号等、運転者の体温及び血圧その他の個人情報の取扱いについて、あらかじめ対象者から同意を得ること。 |
十 事業者は、遠隔点呼の実施に関し必要な事項について、あらかじめ運行管理規定に明記するとともに、運行管理者等、運転者等その他の関係者に周知すること。 |
十一 遠隔点呼を行う運行管理者等は、自社営業所又は当該営業所の車庫、完全子会社等の営業所又は当該営業所の車庫、運転者等が従事する運行の業務に係る事業所用自動車内、待合所、宿泊施設その他これらに類する場所にいる運転者等に対して遠隔点呼を行うときは、あらかじめ当該運転者等を選任している事業者が定めた場所で遠隔点呼を受けていることを、映像により確認すること。 |
遠隔点呼を実施するための手続き
手続き方法
上記の要件等を満たした上で、遠隔点呼実施予定日の原則10日前に提出(実施側、被実施側双方の管轄運輸支局等に提出してください。)